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ひと まち こころ 県民ネットワーク会議

日時 3月1日(土) 午後2時から午後4時まで 

場所 アトリオン地下1階多目的ホール 

午後2時 バリアフリー体験発表 〔1人15分〕 

三戸 学さん (秋田市:秋田市立土崎中学校) 

土橋征之さん恵さん夫妻 (八郎潟町:土橋治療院経営) 

豊嶋卯一さん (秋田市:豊嶋宝飾経営) 

 

午後3時 バリアフリー対談 〜気づきとさりげなさ〜 

佐々木孝さん(秋田市:NPO法人秋田バリアフリーネットワーク理事長) 

安部美恵子さん(能代市:能代市福祉活動専門員、にぐるま工房主宰) 

 

午後4時 閉演 

体験発表「生徒と一緒に」 

発表者  秋田市土崎中学校教諭 三戸学さん 

 

 こんにちは三戸です。今紹介を受け緊張しています。 

 今日は、生徒との生活の中から、バリアフリーについて感じていることを話したいと思います。 

 学校は平成14年度から週五日制になって学習内容も大部変わりました。大きく変わったのは総合的な学習の時間が設けられたことです。どこの学校でもやっています。名前が長ったらしいので「総合」と言っています。総合の学習で何を学ぶかというと自分の調べたいことを調べるんです。 

 去年、総合学習で、1年生の5人の生徒が学校内のバリアフリーについて調査し、1学年全員にアンケート調査をしました。 

 「先生バリアフリーの調査をしたいんだけど、どうすればいい」というので「まずアンケート調査をやってみたら」といってアンケートをしました。 

 「バリアフリーという言葉を知ってますか。」という質問に「はい・いいえ」で答えてもらいました。1年生は187名が知っているということで全体の70パーセントでした。知らないが30パーセントでした。 

ほとんどの人がバリアフリーという言葉を知っていました。じゃ「バリアフリーってどんな意味なの」と聞いたらほとんどの人が答えられませんでした。それで生徒たちは国語辞典でバリアフリーの意味を調べたんです。ところが国語辞典に載ってないんです。 

 広辞苑だったら乗ってるんじゃないかということで生徒は、広辞苑を調べました。すると広辞苑にも載ってないんです。「あれえ」と生徒は思いました。バリアフリーという言葉は、よく聞く言葉なんだけど国語辞典にも広辞苑にも載ってない言葉です。それで生徒は、「バリアフリーというのは最近の言葉なので載ってないんだ。バリアフリーというのは最近の考え方なんだ。」ということに気づいていったわけです。 

 ホームページでは、バリアフリーのページを検索するとたくさんのページがあって探すのが困るくらいページがあります。 

 アンケートでもう一つ、「土崎中学校は、障害者にとってやさしい作りと言えますか。」という質問をしました。 

 答えは「言える」8パーセントでした。厳しいですね。「言えない」36パーセント、「どちらとも言えない」56パーセントでした。 

 僕は、どちらでもないという生徒たちが半分以上いたことから生徒たちのこころの悩みを感じたんです。 

 バリアフリーて何なのかなと考えた場合、学校の場合階段や段差の不便なところがいっぱいありますが、でもみんなが助けてあげれば、協力すれば不便ではありません。でも階段や段差がいっぱいあるので不便といえば不便だなあという迷いが56パーセントという数字になって出てきたのだと考えます。 

 僕は、教室が2階にあるので授業の時は数学係の生徒が職員室に迎えに来てくれて生徒と一緒に階段を上って教室に向かいます。 

 僕は根本的に弱い立場なんです。僕は授業をしたいんですが、生徒が迎えに来ない限り、その教室にすら行けないんです。だから、生徒に「授業やりたくなかったら迎えに来なければいいんだよ。簡単じゃん。」というんです。でも迎えに来なかったことは、1回もありません。必ず迎えに来るんです。すると生徒の気持熱意が伝わってきます。「授業を受けたいんだな。」と。 

 ほかの先生だと受けたい受けたくないと言う以前に先生が授業に来ます。だから生徒は、考えなくてもいいんですね。僕の場合は、「迎えに行かないと先生は来れないんだ。すると迎えに行かないとなあ。」という気持になる。そのあたりがとても大切でないかなと思います。 

 生徒は、私が「ごめんね肩貸してね」と言うと時々、「えー、いやだよう」と渋るんです。で、そそくさと2階に上っていきます。僕は、「なんだ肩貸してくれないのか」と言います。そこが生徒と僕との関係なんだけど、生徒は、肩貸したくないよと言いながらも上に上って気にしてるんです。僕が、2階に上って教室に入ると生徒は、必ず、「先生どうやって上ってきたの」と聞くんです。気になってるから。 

 僕は、「空を飛んできたんだよ」と言うと「うそ、空飛べないでしょ。誰かに手伝ってもらったんでしょ。」というので、「じゃあ、誰かに手伝ってもらったのかなあ」ととぼけて、そこで僕と生徒との人間関係が出来るのです。 

 日々生徒と関わっていると、そういうことが日常的に出来ることが非常にいいんです。 

 バリアフリーという言葉、中学生には、とっても難しいです。意味がよくわからない。しかし言葉の意味から押さえるのでなく、やっぱりこころの問題、感じ方の問題、どう感じるのかという、そこのところを大事にしていきたいと思います。 

 僕は、生徒と一緒に給食も食べており、生徒にパンの袋を開けてもらいます。 

 開けてもらうと「とっても、うれしいよー。」と言います。「開けてくれないとパンも食べれないけど、開けてくれたからパンが食べられる。うれしいなー。」と言うと生徒は、にこにこしています。 

 生徒は、いいことをほめられるとうれしい。人間は、皆そうなんです。ほめられるとうれしい。また自信がつく。 

 ですからいろんな人に是非お願いしたいことは、いいことは何か考えてほしいということです。よく親というのは、人を助けることとかよりもテストの点数の方が先に気になって、いい点数を取ると褒めるけど、悪いと勉強しろと言います。さりげない優しさ、ちょっとした思いやりに対して、子どもの好意に対して、親たちがどれだけ素直に「ありがとう」、素直に「すてきだね」と言ってあげているのかなということを感じています。 

 生徒は子どもです。子どもは、やはり子どもなんです。だから大人にほめられることが非常に自信につながります。 

 最後になりますが、やっぱり人は一人では生きてゆけない。「自分は一人で生きてゆけるんだよ」と思ってる人は、それでいいんですが、僕は一人で生きてゆけないとわかっている。じゃあ、どうやってほかの人の力を借りて生きていくのかということが大切なんです。一人で生きていけないとわかっていても、一人で生きていこうと頑張ってしまうけど、出来ない部分はできないといって、そしてどうやって目の前にいる人に力を借りて生きていくかということが大切だと思います。 

 その部分を僕は、中学生の生徒に身をもって教えたい。それには生徒と一緒にいることが大切なんだなあと思います。 

 今の生徒たちは、10年もすれば社会に出て、働いたり次を担う世代です。 

 子どもたちがどういう人間に育ってほしいかということをもっと皆で議論して、共通理解を図っていけたらなあと思います。 

 最後にエピソードなんですが、今日もこの電動車いすで来ましたが、生徒たちとスーパーなんかでよく会うんですね。この電動車いすを見て生徒がこう言いました。「雨の日どうすんだろう。」素晴らしい感性じゃないですか。僕も「雨の日どうすんのかな。不便だよな。」と言ったら、生徒が「僕がこの上に屋根を付けてあげるよ。」と言うんです。こういう感性、大人には絶対わからない感性が子どもの世界にはあるんです。そういう部分をもっともっと引き出して大人たちが、周りが、受け入れて認めていくようになればいいと感じています。 

 これからも秋田県のバリアフリーに関して、自分なりに微力ながらも一緒にやっていきたいと思っていますのでよろしくお願いします。以上です。



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